漢方薬の副作用についての考察


 平成12年1月、また漢方薬の副作用の報告が新聞やテレビで報道されました。この問題はここ数年繰り返し厚生省の副作用報告という形で発表されています。漢方薬は実際危険な物なのでしょうか?漢方専門薬局の立場から解説してみます。
この問題は、以下の二つの視点から考えてみようと思います。

【1】漢方薬本来の毒性
 漢方薬は自然の生薬からできているので、すべて体に優しく安心という認識が一般にあります。しかしこれは実はかなり誤解のある考えです。漢方で使われてきた生薬の中には、例えば附子(ぶし:トリカブトの根)のような強烈な毒性を持つものもあり、しかも今でも一般の漢方薬に使われているからです。
 もともと生薬には、食品としても用いられるような安全性の高い植物類だけでなく、毒性のある植物をうまく使う事で薬として利用してきたものも多いのです。漢方薬数千年の歴史とは、いいかえればこのような毒草を含む生薬類を長年の人体実験でふるい分けして、用法用量やブレンド法を試行錯誤の上決定してきた歴史、とも言えます。毒草を薬として利用する知恵も漢方の大切なテクニックといえます。
 今使われている現代の医薬品の大部分は、開発されてからたかだか数十年の使用経験しかありません。もちろん医薬品は厳密かつ多数の臨床試験を経て使われるようになっているのですが、漢方のような何百年から千年以上にわたる使用経験があるわけではないので、たとえば人間の何世代にもわたる子孫への薬の影響などが十分判っているわけではありません。しかし漢方薬はそのような長年にわたる研究の上ふるいにかけられ残ってきたもので、何世代にもわたる臨床試験を行なってきたようなものともいえます。生薬の長所短所を十分研究し大量の情報を蓄積してきた歴史があります。
 
漢方薬は安全性が高い、という認識は、このようにして長期間の経験によってえられた漢方の知識をもとに使われた場合にこそあてはまりますが、漢方薬の知識がなしではその限りではないのです。デタラメな使い方をすれば、処方によっては漢方薬の副作用は出て当然ともいえるのです。
   
【2】漢方薬を処方する側の問題
 死亡例まで出した小柴胡湯に関していえば、基本的に処方の選択ミスと言って良いと思います。小柴胡湯は本来『半表半裏証:はんぴょうはんりしょう』用の処方で、病が急性期から慢性期に移行しつつある状態の体力も中程度には残っている、という患者さん用の薬です。しかし今回の報告例では肝硬変や肝臓がんの方、体力が低下し慢性化した症例や高齢者への処方例もあります。このような患者さんには通常長期には用い難い薬です。小柴胡湯は肝臓病で使うなら、慢性肝炎の初期か中期、または急性肝炎の方の中に適応例が多い処方なのです。別の適当な処方が多数あるのにもかかわらず、選択ミスをしたといってよいでしょう。又、小柴胡湯だけでは副作用が出ないのに、インターフェロンと併用することで副作用発現の危険が高まってしまう例が以前から知られ、その事は漢方製薬メーカーでもアナウンスされていたにも関わらず併用が行われていた症例もあります。このような理由で今回の副作用は出るべくして出た、という感想を多くの漢方専門家は持っています。副作用というよりは薬害もしくは医療ミスに近いとさえいえるのではないでしょうか。これは医師や薬剤師も漢方薬は安全性が高い、という甘い認識の上で、漢方をほとんど勉強せずにお手軽に使ってきた事も一因だと思います。
  
 漢方の本来の知識に従った使用をすれば、副作用の頻度はずっと少なくできますし、もし出たとしても適切な処置がおこなわれれば重篤な副作用に発展する事はほとんど心配ないと思います。今後はこのような不幸な出来事がおこらないことを願います。
別のページでも漢方の副作用について触れていますので、参照下さい。


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