西洋医学と漢方医学のちがい


 西洋医学と漢方医学の考え方の違いを知ることで、漢方治療をおこなう際の役に立つ部分もあると考え、思うところを書いてみました。ここに書いたのはとても大まかなとらえ方で、詳細を見るとちょっと違う所もあるのですが、分かりやすくする為にあえて無視しています。
 以下のような違いは、西洋医学と漢方医学どちらが良いと優劣をつけられるものではありません。自分の病気がどちらの療法に向いているか、選択する判断材料の一つにしてもらえればと思います。

はじめに、西洋医学と漢方医学は全く異なる価値観からなる医療体系ですが、まったく相反するものではありません。病気の治癒というゴールに向かい、それぞれ別のルートを通ってテープを切ろうとしているということです。一方が行きづまった時には、もう一方の道を試してみるのも悪くない選択だと思いませんか。

(1)西洋医学は、主に病気に対して攻撃的な療法で対処してきたのに対し、漢方医学は体の調和をとる事を重視し、結果として守備力を高めることを得意とする。
 西洋医学は病気の原因となるものを“病原=悪”として、直接攻撃または排除する事で病気を治すことを主な戦略としてきた歴史があります。従って敵である病気の原因がはっきりしていて、それに対する有効な新薬や手術法が開発されている場合に、西洋医学は最大の効果を発揮します。そのために病気の原因をさぐる精緻な検査法や、強力な薬を次々と開発してきましたし、今後も更に発展していくでしょう。このような努力で伝染病をはじめ多くの病気が、西洋医学で克服されてきました。適応が合えば、劇的に効果があげられる為に、現代では西洋医学が治療現場の主流になっているといえるでしょう。
    
 しかし一方で、検査で目標となる原因がハッキリつかめない病気や複数の原因が複雑にからみ合っているような病気、また病因がストレスや生活の歪みなど薬の直接の攻撃対象にできない場合などでは、西洋医学が効果的な結果の出せないケースが多くあります。そして今そのような現代病が増えている傾向もあるのです。
 又原因が特定でき、良い治療法があっても、病人本人が高齢であったり体力が衰えていたりして、効果的でも副作用の強い新薬は使えない事もあります。このようなケースに漢方は大変有効です。
   
 漢方医学は人間に備わる治癒力を、体のバランスを取ったり足りない物を補ったりすることで最大限に引き出し、病気を治す事を得意とします。原因がはっきりしないケースや病人にあまり体力が残っていないなどの症例にも漢方薬は問題なく使え効果を発揮します。
 体の守備力を高める=治癒力・回復力を高める、ということは、すべての病気に対して成果の大小はありますが必ずプラスになるといえます。また生活習慣病(成人病)なども、元々の原因が食生活などにある事が多い為、医食同源という考えのある東洋医学的な治療法が思いのほか効果的である場合が多いといえます。ホルモンや自律神経などのバランスが崩れる事でおこる病気も、バランスをとる事を得意とする漢方薬が向いている場合が多いといえます。
 しかし急性症状の強い緊急を要するような症状では、漢方薬では手に負えないケースが大半です。また病気の検査法なども、東洋医学はその再現性や精密さの点では西洋医学に遠く及ばないといえるでしょう。
(蛇足ながら、もちろん漢方医学にも攻撃的な療法はあり、西洋医学も守備力をあげる手段があります。)
    
(2)西洋医学は身体を細分化して治療法を確立してきたのに対し、漢方医学は身体を1つのつながったものとして全体の調和を重視することを治療の基本としてきた。
 治療を機械の修理に例えると、西洋医学では機械を細かく部品単位にわけて調べ、壊れている部品を探しだして処置を施す、という修理法を得意としているといえます。とても合理的ですが、機械の故障の原因が全体的に油切れをおこしている為だったり、あちこちが老朽化して調子が悪い時などは、全体を見るような漢方的な診断をして、油をさすような修理の方が効率がよいでしょう。前者のような一部品だけの故障のケースでは、悪いところを交換するような西洋医学的治療ですぐに良くなり、漢方の出番はあまりありません。しかし多くの疾患で、後者のような全体をみないと病気の本質が判らないような状況をみかけます。この場合西洋医学では、悪くすると何種類もの薬をあれこれ試してもなかなか病気が改善せず、あげくに薬の副作用で調子をさらに崩したりすることもありえます。

 具体的な例をあげると、高齢の男性患者で、白内障を患い前立腺肥大症で瀕尿をおこし、そして血圧も高くなってきた方がいるとします。この方が病院に行くとすると、それぞれの病気に対して専門科に分けて診察します。まず眼科で白内障を検査してもらい泌尿器科で前立腺を調べ、内科で血圧を治療する、というそれぞれの専門科にまたがった治療を受け、それぞれの科から処方される沢山の薬を飲むようになってしまうでしょう。こういう場合漢方なら、老化の一環としてすべて関連してとらえ、その方に合った漢方薬を一種類出すだけで対処でき、しかも老化に伴い今後でるかもしれない症状に対しての予防も兼ねられるのです。このようなケースはよく見かけるもので、もっと漢方薬の出番があってもよいのでは、と個人的には思います。
   

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