ガンと漢方薬


 悪性腫瘍・ガンは、21世紀を迎えようとしている今日でも、まだ克服するに至っていません。しかし日々進歩する現代医学により、治療は着実な前進をしています。そんな中で漢方薬が担うガンに対する有用性をこのコーナーでは記載します。ガンと漢方療法は他の疾患にくらべ特に研究の対象になることが多く、科学的にもそのすぐれた有用性が証明されている分野です。

   
【ガン治療について】
 西洋医学では現在、ガンの治療は概ね以下の方法で行なわれています。
 1 手術(外科的療法)
 2 放射線療法
 3 抗がん剤療法(化学療法)
 4 免疫療法
 5 その他(一部のガンに対するホルモン療法など)

 ガンは手強い病気ですので、まだ治療法の決定打が無く、多くの場合上の療法を複数組み合わせて対処しています。しかし以前に較べて治療成績も格段に上がってきています。
今日ガンの治療を行なうには、まずこれらの西洋医学的療法を優先に選択していくべきでしょう。
 
ただ、ガンと一言でいっても、いろいろな種類のガンがあり、またその進行度によっても治療法の選択枝は何種類もあります。そしてそれぞれの療法にはメリットデメリットもあります。本来は医師にすべて任せるのではなく、患者さんの側からも積極的に治療に参加するつもりで十分説明を求めて状況を把握し、医師とのコミュニケーションを深めた上で、治療法の選択に自分の意志を反映させるような形が望まれます。自分の病気に対する治療方針がよく分からない、ではうまくありません。これらがしっかりした上で、漢方薬を使う意味もはっきりし、より有意義なものになっていくと思います。
   

【ガンと漢方薬治療】
 『ガンに効く漢方薬を下さい。』という相談を受ける事がよくあります。この場合、お客様の中には癌細胞を直接攻撃して縮小させる漢方薬、というイメージを持っている方がいますが、これは正しくありません。生薬の中には、確かに抗癌剤のようなガン細胞を攻撃するような働きのあるものも知られていますが、その効果は西洋薬の抗癌剤には及ばないといわれ、あまり実用的ではないのです。漢方薬の一番の長所は、体力を補い免疫力を高めることで、間接的にガンに効果を示す点にあります。その意味で免疫療法の一つと考える事ができるでしょう。ちょっと消極的でこころもとない感じがするかもしれませんが、使い方によってこれは大きな武器になり得ます。ガンの種類や進行の状態にも関係なくいつでも有効に使え、特に体力が衰えた状態でも十分使えるのも長所です。
 特に最近注目されているのは、西洋医学的ガン治療と漢方薬の併用療法です。一般のガンでは、現代医学の治療法の柱となるのは手術(外科的療法)、放射線療法、抗がん剤療法(化学療法)です。それぞれ手段は違いますが、癌細胞を直接攻撃する療法です。これらは大きな成果が期待できる半面、患者さん本人にも少なからぬ副作用などの負担を強いる性格のものです。漢方薬をこれらの療法と併用する事は、これらの短所をカバーするという点でも大変なメリットがあります。

 これら西洋医学の攻撃的なガン治療を行なう場合では、その成功は患者の体力や免疫力、ひいては生命力の大小が結果に大きく影響してきます。この体力や免疫力を高めるのに、漢方薬は非常に効果が期待できるものの一つといえます。その意味で、例えば手術(外科的療法)の前後に漢方薬を使えば、術後の傷の回復も早まるでしょうし、その後の再発予防にも大きく貢献できると思います。放射線療法との併用では、その制癌作用を高めると同時に副作用を抑える効果が知られています。抗がん剤療法(化学療法)との併用も、同様に制癌作用を高めると同時に吐き気などの副作用を抑える効果があり、又体力を維持できるので、抗がん剤を単独で使うよりも有意に良い成績が期待できます。以上の事は長年の多施設による研究で、医学的にも確かめられ報告されている事です。しかし実際には漢方薬を併用している患者さんはまだあまり多くはないので、今後はさらに沢山の方に利用される事を望んでいます。


 具体的な漢方薬の処方としては、上であげたような併用療法として使う場合は「補剤・ほざい」といわれる体を補う作用のものが中心になります。十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)などが多く使われます。これらの漢方には体力や免疫力を高める作用以外にも、食欲を回復させたり、ガンの痛みなどを軽減させたりする効果も報告されています。また進行癌などで極端に体力が落ちていても副作用の心配がほとんどなくしかも体力を高められるなど、多くの利点があります。もちろん長期服用する事が可能です。そのほかにもガンに使う漢方処方は多くありますので、状態にあったものをきちんと漢方の専門家に選択してもらうと良いでしょう。
  
   
【ガンと健康食品など】
 ガンに良いという健康食品も多数知られています。最近よく使われるもの思い付くままにあげると
アガリクス・プロポリス・霊芝・鮫の軟骨・めしまこぶ・キチンキトサン・冬虫夏草 ets
など、多数あります。それぞれそれなりの研究施設で臨床データをとり、ある程度有効性が確認されているものが大半です。

 よくお客様からの質問で、どれが一番効くの?と聞かれる事がありますが、これは難しい問題です。実際に比較試験のデータなどもいくつかありますが、決定的な結論は出ていません。答えは多分症例や個人により違うので、一概には決められない、という事でしょう。(メーカーでは、自社製品が一番とそれぞれうたっていますが)
 私としては、健康食品は使った方が良いかもしれないが、あくまで補助的なものと考えて使うことをおすすめします。多くのものは金額的にも安いものではありませんし、経済的に許されるならば無理のない所でどれかを選択すればよいと思います。命に関わる疾患ですので、誰かにこれが絶対良いといわれれば金額など二の次、と考えがちですが、その期待に必ず答えられるような絶対的なものは、残念ながらまだありません。
 もしガンの治療に病院での治療プラス何かをしたいと考えるなら、効果から考えてまず漢方薬を併用し、日常の食事や生活に気を配る事が先決です。その上で使いたい意志があれば健康食品類の使用などを検討したら良いと思います。
   

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